世界と比較する日本の学力

2022.3.9

世界と比較する日本の学力レベル

前回のコラムでは、世界各国と日本の英語能力の差についてお話させていただきました。
世界各国やアジア諸国と日本を比較した際に明らかな英語能力の差が存在する事や、現状の日本で行われている英語教育はどうなのだろう…などお伝えをしました。
前回のコラムを読んでいただいたみなさまどう思われたでしょうか?

“学歴社会と言われている日本なのに、思ったよりランキングが悪い!”
“やっぱりそうだよね、思っていた通りだ!”

感想はさまざまだと思います。
前回は英語能力のみを対象として見ていきましたが、他の能力についてはどうなのか気になるところです。
ということで今回は、学力全体について調べてみました。

世界の学力水準を知る

世界の学力水準を比較するという上では、文部科学省の学習指導要領に影響を与える2つの国際学力調査があります。

一つ目は、OECD*(経済協力開発機構)が2000年から実施しているPISA(生徒の学習到達度調査)です。PISAは、義務教育修了段階の15歳児(日本では高校1年生にあたる生徒)を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、生徒の学習到達度調査を実施しています。PISAについては、英語を直訳すると「国際生徒評価のためのプログラム」となっています。
*OECDはヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関で、加盟国間の分析などを行なっている機関です。

二つ目は、IEA*(国際教育到達度評価学会)が1964年から実施しているTIMSS(国際数学・理科教育同行調査)です。TIMSSは、日本では小学校4年生および中学校2年生が対象となり、算数・数学、理科について教育の到達度を測定し分析しています。
*IEAは非営利の国際学術研究団体で、教育の分野についての政策立案決定の多くに影響を及ぼしている団体。

前回開催された調査報告について、日本のランキングをそれぞれで見ていきましょう。

【PISA2018の調査結果】
OECD加盟国比較(37カ国)
数学的リテラシー:1位
科学的リテラシー:2位
読解力:10位

全参加国・地域比較(79カ国・地域)
数学リテラシー:6位
科学的リテラシー:5位
読解力:15位

【TIMSS2019の結果】
小学校(58カ国/地域)
算数:5位
理科:4位

中学校(38カ国/地域)
数学:4位
理科:3位

TIMSSでは英語能力アジア1位のシンガポールは、小学校・中学校ともにすべての項目で上位に入っています。

この結果を見てどう思いますか?
算数・数学・理科・科学の分野は素晴らしい成績だと思いませんか?
注目いただきたいのはPISAの調査結果についての文部科学大臣のコメント(*3)です。

“数学的リテラシー及び科学的リテラシーは、引き続き世界トップレベルですが、読解力については、OECD平均より高いグループに位置しているものの、前回2015年調査よりも平均得点及び順位が低下しています。”

“読解力については、低得点層が増加しており、学習指導要領の検討過程において指摘された、判断の根拠や理由を明確にしながら自分の考えを述べることなどについて、引き続き、課題が見られることも分かりました。”

では、読解力とは具体的にはどのようなことなのでしょうか。

読解力とは?

読解力とは、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと、と定義されています。

読解力を測定する能力は次の3つに分かれています。
①情報を探し出す ②理解する ③評価し、熟考する

文部科学省・国立教育政策研究所がまとめているポイント(*2)には、このうち①情報を探し出す  ③評価し、熟考するについて課題が残ったと報告されています。

読解力についての課題分析

読解力の課題詳細についても、以下のようにポイント(*2)がまとめられています。

“自由記述形式の問題において、自分の考えの根拠を示して説明することに、引き続き課題がある。誤答には、自分の考えを他者に伝わるように記述できず、問題文からの語句の引用のみで説明が不十分な解答となるなどの傾向が見られる。”

これは言い換えると、

“物事について、自分なりに調べて考え、意見をまとめて他者に伝えることが課題となっている”ということではないでしょうか。

欧米諸国では幼少期から個人の意見を主張し伝えることを学んでいる。
その反面、日本では右へ倣えというようにみんなと同じであることが望ましいという教育を受けている。
この根本的な違いが、結果に影響を及ぼしているのではないでしょうか。
では、読解力を向上させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

読解力向上のポイントは?

そのヒントまでポイント(*2)にまとめられています。

“読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒の方が、読解力の得点が高い。中でも、フィクション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力の得点が高い。”

そうです、読書をすることが読解力を向上させるポイントとなります。

「そんな当たり前のこと?」と思いますよね。
そんなことは昔から言われていますよね。
では、生徒が読書する頻度はどうなっているのでしょうか。

読書の頻度は…?

生徒質問調査の中で日本の生徒の読書についての回答結果(*2)を見ると、
「月に数回」「週に数回」読むと回答した生徒の割合は2009年対比で減少しているのです。

新聞:21.5%(36.0ポイント減)
雑誌:30.8%(33.8ポイント減)

最近はデジタル化やDXがすすみ、様々なデジタルコンテンツが溢れているので、「読書」をする時間が少なくなっているのではという意見もあるかもしれません。
しかし、「読書」の中にデジタルコンテンツなどの多様な読み物も含まれているのです。
この結果を見ると、5Gの到来した動画があふれる現代世界では、文字を読むよりWeb検索やYouTubeなどの動画で答えを調べられることが結果に影響しているのではないでしょうか。

読解力を向上させるための方法

読解力を向上させるためのポイントは読書をする、そしてその頻度ということが分かりました。

では、読書の頻度を増やすにはどうしたらいいのでしょうか。
色々な意見がありますが、本を読む「習慣」をつける、ということが重要になります。
では、習慣をつけるためにはどうしたらいいでしょうか。

色々大切なことはありますが、まずは一人で「読める」ようになることが重要ではないでしょうか。
一人で「読める!」という自信がつくと「もっと読みたい!」と子供は積極的になります。
そして何より子供が楽しみながら読むことを学ぶことが重要です。
そもそも、色々な事にチャレンジをしても、子供が楽しい!と思わないとそのチャレンジ自体が苦痛となり継続はできません。
子供が読書を好きになるために、子供の興味のあること、好きなキャラクターなど、子供の「興味」「好き」にフォーカスをしてみてはいかがでしょうか。
そして、子供自身で本を選ぶことが大切だと思っています。
ぜひ、子供の読書を応援しましょう!

出典:

(*1) 文部科学省ホームページOECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント参照

(*2) 文部科学省ホームページ 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント参照

(*3)文部科学省ホームページ OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)の結果公表を受けての萩生田文部科学大臣コメントより抜粋

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